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哲人を見た 9/5(土)〜6(日)黒部渓谷
■出発/4日夜10:00、扇沢トロリーバスP/6時30分着 トロリーバス7時30分発→8時黒部ダム着 8時アプローチ開始 ■天候/5日快晴・6日曇 ■気温/午前15度、午後20度 ■水温/10度前後 ■標高/約1500m |
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秘境黒部…まさか自分がこの渓谷で釣りをするとは、夢にも思っていなかった。皆の甘い誘いにのってここまで来たが、不安でいっぱいだ。私の脚でついて行けるだろうか? 噂どうりのすさまじい水量なのだろうか? そして、尺をゆうに越えるという源流岩魚に出会えるだろうか?
今回のメンバーは柿崎、橋本、平尾、そして私の四名だ。黒部ダムから目的地の平乃小屋までの登山道には、タンボ沢、御山谷と中ノ谷という3本の支流がある。ダムから約1時間、2番目の支流である御山谷で柿崎、橋本とわかれ平尾と釣り上がる事にする。入渓地にはすでに二人の餌師がおり、あまり期待をせずロッドをセットする。平尾はテンカラなので相変わらずスタートが速い。水量はそれほどでもなく、これならドライでも大丈夫だろうと#10のカディスを結ぶ。私が餌師の後方で待機していると、先行していた平尾がビニール袋を手に嬉々として帰って来た。「28、28!」これが黒部の岩魚か。よし、私も負けてられないと気合いがはいる。淵でねばる餌師に声をかけると「どうぞ、どうぞ」と先を譲ってくれた。あいがたい。フライを数回流してみるが、イメージと違う。ドラグがかかる、というよりハイフロートに仕上げたカディスでは水になじまない感じなのだ。そこで#12茶色のパラシュートに交換。結果、何度目かの落ち込みで15cmのチビ岩魚をかけることができた。サイズは小さいが、黒部での初物なので格別の気分だ。その後、同サイズを1尾追加して入渓地点に戻る。 ■御山谷/平尾 28cm×1・15cm×1尾、冨永 15cm×2尾 御山谷から約1時間半、次の支流である中ノ谷に到着。12時を少し過ぎていたので、まずは昼食に。平尾が先ほど釣りあげた、岩魚を食べている間に先行させてもらう。少し釣り上がった所で3尾目・サイズ18cmをゲット。御山谷では白っぽい色だったのに対し、この岩魚はサビが残っているように黒い。黒部では各支流により魚体がかなり違うらしい。ここでフライパターンを変えてみることにした。この谷は白い巨石だらけの、いかにも山岳渓流といった趣き。平尾によると、この水量でもここでは渇水気味という。ならば、岩魚もそれなりにシビアになっているハズだと考え、テイルが無く沈み気味で、ピーコックボディで岩魚を誘惑するイワイイワナにチェンジした。サイズは#16、フロータントをつけずに意識して水面下を狙ってみた。まずは落ち込みの泡の切れ目にフライ数回流したが反応は無い。次は泡から流れが反転して、落ち込みに戻る流れを狙ってみる。うまく流れにのらないので、3度目にわざとラインにテンションをかけてフライを戻してみる。水中にユラユラと黄色いウイングだけが見える。数秒間息をひそめ、我慢しているとユラリと魚影が反転した。よし! とアワセをくれる。後方の平尾に「掛かった」と叫ぶ。「流れにのせるな」と平尾君のアドバイス。ティペットは4X、よし! ごぼう抜きだ。ポーンと岩魚が飛び出してきた。やったぜ、サイズは? と計ってみると24cm。あれ、小さいではないか。引きの感じからいうともっと大きいハズなのだが…。やはり水量の多い黒部で育った岩魚は引きが強いのだろうか。とにもかくにも、徐々にサイズがあがってきたのが嬉しい。その後、魚止めの滝が現れここで納竿とする。 ■中ノ谷/冨永 18cm×1・24cm×1尾 再度、歩き出して30分、午後3時すぎ、宿泊地である平乃小屋に着く。先行していた柿崎・橋本はまだ到着していない。小屋のオーナーの話によると、この先のヌクイ谷に入ったらしい。その後、ライズは無いがロッドを振ってみようと、オーナーと小屋下のダム湖に下りる。普段、我流のキャステイングで釣りをしている私は、遠投を必要とする湖ではまったく手も足もでない。煙草を吸いながら、心地よい疲労感と素晴らしい景色、ゆったりと流れる時間を楽しんだ私は、やっぱりなまけもの。金持ち喧嘩せずであった。 ■平乃小屋下ダム湖/冨永 煙草×5本・写真×1枚 その夜、酒を呑み交わしながら他の釣り人、オーナーと釣り談義に話がはずむ。この小屋のオーナーはまさに黒部の主、「マスター・オブ・クロベ」であった。数々の秘話を要約すると ●黒部の岩魚はダム湖が天然の養魚場になっている ●雨が降るとダム湖から各支流に岩魚が遡上する。虹はのぼらない ●支流のサイズは60まで! ●6月中旬には小屋は開くが雪白があり支流での釣りは難しい ●その時期はダム湖でのFFが狙い目。しかし水の透明度が高くシビアである ●ダム湖では70オーバーの岩魚と虹が狙える。夏になると透明度が下がりライズ狙いのドライの釣りになる ●8月の盆をすぎて9月末の産卵までが支流での釣りにはベスト ●支流では基本的にFF、特にロングリーダーでのドライフライの釣りは不向きである。なぜならば ◆水量が多く、流れが速く重い ◆岩魚は、重い流れの底に定位しいている ◆大物は岩のエゴに隠れており、複雑な水中の流れを回避・利用して、そこにフライを送り込むのは難しい 以上、オーナーの言葉を簡単にまとめてみた。つまり黒部の川で尺を越える岩魚を狙う場合は、毛針をエゴに隠れた岩魚の鼻面に送り込む、これにつきるようだ。もちろん今回の私のように、流れに出ている岩魚を釣る事もあるが、それはあくまで例外である。オーナーが言うところの「出あいがしら」でしかないのだ。ロングリーダーでドラグを回避し流れという線を釣るのではなく、いかに岩魚の潜むエゴに毛針を送り込むかという、点の釣りが黒部では必要なのだそうだ。結果、FFよりもテンカラが有利だし、そのテンカラにしてもロッドは尺上を流れからブッコ抜く為の硬さ、強風に負けない為のフライライン、リーダーも2Xは必須であるという。参考に毛針を見せてもらったが ●フックは#12、太く重い ●ボディはピーコック ●ハックルはスタンダードに巻いた黒 ●ヘッドには赤いスレッド、というもの。結果的だが私が使ったイワイイワナの原形であるパターンが、ベストのようだ。 ■平乃小屋/冨永 煙草×2箱・バーボン&日本酒×多々 翌日8時起床。すでに他の釣り人は出発した後だ。平尾君は昨日の28cmで満足したようで、今日は釣りをしないと言う。柿崎・橋本は渡し船で、対岸の針ノ木谷に入る。私は小屋下のヌクイ谷最下流部で遊ぶことにした。午後12時半、オーナーのご好意により船でダムまで送っていただく事に。わずか20分ほどの船旅だったが、船上から見た黒部の山々はいつまでも私の想い出となることだろう。 |
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