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Vol.4 Apr.2004
音楽は本来人の心に働きかけるものだから、
音楽によって気持ちの有り様が変わったり、
心の中が波立ったり鎮まったりするのは当然なのだけれど、
彼らの音楽を聴いている時の気持ちをどう言葉にしたらいいものやら、
実は今でも考えあぐねている。
・
甘く切なく、
叙情的でロマンティック。
時には激しく荒々しく、
でも歌詞の世界は常にリリカル。
そのバンドの名前はHIMという。
・
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フィンランド出身の彼らは
1997年にChris Isaakのヒット曲
“Wicked Game”
のカヴァーで世に出ることとなった。
この“Wicked Game”という曲は
日本でもテレビCMに使われたこともあるから、
ご存知の向きもあるかもしれない。
“恋”という奇妙なゲームに
翻弄される心を歌った曲である。
どこかダークで、
けれど一皮剥けば
狂おしいまでの熱い情熱に満ちているような、
そんな雰囲気の曲想だが、
この曲が
その後のHIMの世界の色調を見事に現しているあたり、
バンドの運命とはなかなか不思議なものだ。
・
その後
「GREATEST LOVESONGS VOL.666」アルバムで
デビューを果たした彼らは、
シンガーで総ての曲の作詞作曲を手がける
Ville Valo
の
ルックスの良さも手伝って、
母国フィンランドで、
そしてドイツで
高い人気を得ることとなり、
続く
「RAZORBLADE ROMANCE」アルバムは
ヨーロッパの大陸を中心に
100万枚近いセールスを記録。
一躍人気バンドとなった。
・
長身痩躯、
ダークヘアに緑色の印象的な瞳を持つVilleは、
フィンランド以外に
ブルガリアとハンガリーの血を引くという。
低音から裏声まで駆使したその歌い方は
CDで聴くかぎり、
かなりセクシーで、
アイドル人気が沸騰したのもうなずける。
楽曲も
ヘヴィ・メタルを基盤としてはいるものの、
かならずしっかりとしたメロディがあり、
Villeのセクシーな歌声と相まって、
聴き手を曲の世界に導いていく。
・
続くアルバム
「DARK SHADOWS AND BRILLIANT HIGHLIGHTS」
からはシングル
“Pretending”
が
ベルギーなどでチャートの1位を記録するヒットとなり、
2003年4月にリリースされたアルバム
「LOVE METAL」
で
遂にイギリスでの成功も後少し、
というところまでやってきた。
実際、
2003年だけでロンドンの
『Astoria』
を3回Sold Outにしているが、
これは記録だ、という。
・
12月のロンドン公演は
幸いにしてこの目で見ることが出来たが、
入場前に
会場のあるブロック全体を
ぐるりと取り巻くような長蛇の列が出来ているのには驚いた。
同行してくれた在英の友人も
「長年ここでライヴを観ているけれど、こんな長い列は初めて見た」
と
目を丸くしていたが、
海外のライヴは
日本に比べて出足が遅いのが普通と思っていた私ものけぞった。
イギリスでの人気もいよいよ本物になってきたんだなあ、
と実感させられることしきりであった。
それまでも
イギリスのロック雑誌で頻繁に取り上げられていて
「ああ、彼らをスターにしたいんだな」
とは思っていたが、
ここまではまっていたとは。
恐るべし、
である。
(ちなみに4月に予定されている
全米ツアーもチケットは売り切れ状態……
いよいよアメリカにも飛び火するのかしらん)
・
で、
顧みて我が国は、
というとアルバムすら出ていない状態なので
推して知るべしである。
一部では熱心なファンがいるらしいが、
やはり日本盤が出ていないのは辛い。
これだけわかりやすくて
綺麗なメロディを持つバンドなのだから
売方次第でうまくいくと思うのだけれど。
・
それはともかくとして、
自分にとって
HIMの魅力は一体どこにあるのか、
を考えてみたい。
これまでも書いてきたとおり、
ロマンティックで甘く
(でも甘ったるくはなくーこの違いは大きい)
でも
どこかにきちんと
エッヂを残した楽曲の良さもさることながら、
実は私にとって
彼らの魅力の大きな部分を占めているのは、
その歌詞だ。
・
これが実に……なんというか、
女性が聴き手となった場合
非常に気持ちのいい歌詞で。
ここで1つひとつ
訳して挙げることが出来ないのが
もどかしいのだけれど、
端的に言ってしまうと
Ville Valo
の
歌詞の世界では
常に女性が崇拝の対象であり、
彼はあくまでも
女性に奉仕する側なのである。
例えば、彼は
「きみが行くところならどこにでも俺はついていく」
と歌い、
「女性は太陽で男性は月」
と語る。
(世界の神話に詳しい人ならご存知のとおり、
太陽神が女性というパターンは非常に少ない。
ギリシャ神話でもインカの神話でも
太陽神は男性で月は女性なのだ−日本神話は逆だけど)
・
恋の主導権は常に女性が握っていて、
彼は翻弄され傷つき、
「愛に生き埋めにされた気分」
になってしまう。
これはね、
なかなか面白いですよ。
男性原理が支配する世界の中で、
Ville Valoなみにルックスのいい男性に
「きみのやること総てに憧れるんだ」
なんて言われてみたい女性はきっとたくさんいる訳で。
(も、もしかしてHIMってメタル版ハーレクイン・ロマンスだったのか?!)
・
もちろん、
ロマンティストな男性にとっても
そのサウンドと詩の世界は充分魅力的らしく
男性ファンもかなりいるらしい。
むくつけき
デス・メタル・バンドのメンバーが
「HIMはいいよー」
なんて言ってるのを見て
びっくりしたこともありますが、
一つの世界を確立しているという意味で
引き寄せられるところがあるのかもしれない。
・
北欧のバンドは交流が盛ん、
なとおりフィンランドの
デス・メタル・バンド、SETENCEDや、
ゴシック・ロックン・ロールな
THE 69 EYESとはお友達だし、
TURBONEGROとも
彼らのトリビュート・アルバム
「ALPHA MOTHERFUCKER」
に
“Rendezvous With Anus”
のまか不思議にして怪しいカヴァーを
提供した縁もあってお知り合いらしい。
・
そんなHIMだが、
所属レーベルとの契約を終わらせる意味もあって
(ありがちなパターンですね)
先頃ベスト・アルバム
「AND LOVE SAID NO...1997~2004」
をリリースした。
(これが日本に届くのを待っていたので
今回、原稿が遅れたんだけど)
この選曲がねー。
誰が選んだんだか知らないけど、
いいんですよ。
これ1枚あればとりあえずOKじゃない?
って言えるくらい。
・
デビュー当時から今に至るまでの
ヒット曲は総て網羅されているし、
新曲や新たなカヴァーも入っていて、
この7年を見事に総括している内容となっております。
とりあえず、
彼らに興味を持った向きは
このアルバムから入ればいいかな、と。
(その次に買うのは「RAZORBLADE ROMANCE」がいいんじゃないかと)
・
にしても
ヨーロッパで既に200万枚近く
アルバム売っているバンドが
日本じゃこのままだなんて
もったいないよなあ。
Ville Valoの賞味期限も、
怪しくなってきてることだし。(苦笑)
・
で、
冒頭に掲げた命題なのだけれど、
やはり言葉で
彼らの音楽を聴いている時の心境を
表すのは難しいようだ。
恋をしている時に
体験する様々な感情や思い、
そんなものを一緒くたにした感覚
とでもいうのだろうか。
だからこそ彼らの音楽は
“Love Metal”なのだろうけれど。
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今月は
もう1つというか
もう1枚というか簡単に取り上げます。
・
ノルウェイの
というバンドの
デビュー・フルレンス・アルバム
「WHITE DIARY」。
HANOI ROCKS好きな人は必聴。
デジャヴの嵐に襲われそうでしたが、
いやーなんか久々にかっこいい若手が出てきたぞー、
という気分です。
・
グラム・パンクと呼ばれているそうですが、
ロケンローはロケンローでして。
“バンドにルックスのいいメンバーは一人しかいない”(苦笑)
最近の北欧系にしては
ルックスのいいメンバーが最低でも3人はいるし(笑)、
シンガーのBlanco Summersはスター性あるな、
と感じます。
(私のルックスの好みは違うけど)
・
ディストーションのかかっていないギターがバッキング刻んで、
軽薄そうなコーラスが流れて、
うまいんだか下手なんだかわからない
勢いと情感で爆発しそうなヴォーカルがかっとんで行く……
時代が一回りしたのかな?
とも思いますが、
どこかで見かけたら
「おお、こいつらか」
と眺めてみてください。
・
ということでそれではまた次回。Klem fra!
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