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Vol.5 May.2004

最近は古い作品のリマスタリングだの再発だのがある一方で、
1980年代に出た作品が廃盤になっていたり、と
CDの有り様も今ひとつよくわからない。
そんな中で、
自分が繰り返し熱心に聞いた作品が既に廃盤になっていたりすると、
なんともいえない感慨やら憤りやらに捕らえられる。

今回紹介する作品も
もしかするとそんな風に、
Music industryってやつの霧で満ちた迷路の中に
消えてしまっているかもしれないが、
運が良ければきっとどこかで出会えるんじゃないか、
というそういう作品だ。

振り返ってみると私とこのバンドとのつき合いも
はや10年を越えるものとなった。

アメリカのカリフォルニア州ロサンジェルス出身、

REDD KROSS

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REDD KROSS

JeffreySteveMcDonald兄弟が
常にバンドの核として存在している、
というよりは彼ら2人が
そのままイコールREDD KROSSなのだろう。

彼ら以外のメンバーは
かなりの頻度で代わっており、
本人達も

「僕達がスタジオでいきなり大げんかを始めちゃったりするせいかも」

などと冗談めかして言ってはいたが、
ファミリー・トゥリーなんぞを書こうものなら
いくらページがあっても足りないので、
とりあえずデビューは多分1978年。

なぜ多分かというと、
どの作品をデビュー作と認定したらいいか不明だからだ。

彼らは
1970年代後半のカリフォルニアの
パンク・シーンに所属するバンドとして
活動を開始した。

Jeffが14、5歳、
Steveに至ってはまだ11歳。
流石に他のバンドからは随分可愛がられたらしい。

この頃のサウンドは彼らの1stアルバム

「BORN INNOCENT」

で聞くことが出来るが、
いかにもな感じのパンク・サウンドである。

しかし、
3歳でBEATLESのライヴに行ったという筋金入りの
BEATLESファンであるJeffSteveの持つ
天性のポップ・センスが開花するのに
それほど時間はかからない。

1984年、
アルコールとドラッグのリハビリの後に出した
カヴァー・ミニ・アルバム

「TEEN BABE FROM MONSANTO」

にはKISS"Deuce"
ROLLING STONES"Citadel"
1960年代に活躍したガール・ポップ・コーラス・グループ、
SHANGRI-LA'S"HEAVEN ONLY KNOWS"
David Bowie「MAN WHO SOLD THE WORLD」
に収められている"Savior Machine"等々と
彼らの幅広い影響が見て取れる選曲が為されている。
(ちなみにライヴでは"Deuce"KISSファンなら大受け、
なアクション付きでプレイしてくれていた)

この後、1987年に

「NEUROTICA」アルバムをリリース。
(これは昨年再発になっているので現在でも入手可能)

1990年にメジャーのAtlanticと契約し、

「THIRD EYE」

を発表したが、
正直なところきっとAtlanticには
彼らのようなバンドをどう扱っていいか
わかる人が居なかったに違いない。(笑)

結局、
イギリスでのライヴを
予定していたその日に契約を切られる、
という羽目に陥っている。

かくいう私が彼らに出会ったのは、
実はこの

「THIRD EYE」アルバムがきっかけだった。

私の大親友が

「最近、好きでさ」

というんで、

「それじゃ聴いてみようかしら」

と思いCDを購入。
大当たりでもはや14年である。(苦笑)

この後彼らはThis Way Upと契約し、
メジャーのディストリビューションで

「PAHSESHIFTER」「SHOW WORLD」

という2枚のアルバムを出し、
1995年と1997年には来日まで果たして、
そして沈黙に入ってしまう…。

去年の冬に、ふと気付いたら
彼らが最後にライヴをやってから
もう7年近い歳月が流れていた。
その間、Jeffは子育てに忙しく、
お遊びみたいなソロ・アルバムを作ったり、
奥様のCharlotte Caffey
GO-GO'Sのギタリスト)と一緒に曲を書いたり、
弟と一緒にDONNASのアルバムのプロデュースをしてはいたものの、
殆ど表舞台には出てこず、
弟のSteveも結婚したり、
自分のバンドをやったりしてはいたものの、
どちらかというとLow-profileを決め込んでいた風だった。

ところが去年の暮れになって

REDD KROSSが新しいアルバムを作っている」

というニュースが入ってきたもんだから

「えー!」である。

タイトルは

「BLACK MOTORCYCLE MADONNA」

相変わらずかっこええセンス……。
きっとどこをどう切っても
変わらない部分は変わらないんだろうなあ、
と思いつつ私は今、
このアルバムが出来上がるのを楽しみにしている。

それにしても、
1990年にこの「THIRD EYE」に出会わなかったら
その後の私の音楽の世界は随分違っていただろうなあ、
と思う。

1980年代を
ヘヴィ・メタルに浸かって過ごしていた私の耳に飛び込んできて、

「そう、私が本当に欲しかったのはこれだったんだ」

と思わせてくれた、それが

「THIRD EYE」

だった。

一口に言ってしまえば、
1960年代、1970年代のありとあらゆる音楽を吸収し、
ねじくれた彼ら独特のポップ・センスで
料理して吐き出してきた音楽。
それがREDD KROSSの音楽。
ポップでメロディアスなバンドは
かなりの数いるが、
その中でREDD KROSSが唯一無比の存在足り得たのは
やはりこのひねくれてねじくれたセンスなんだろうと思う。
甘ったるいくらいポップでも、
彼らの音楽にははっきりと毒がある。
そしてこの毒があるゆえに、
聴き手は中毒症状を起こしてしまう、
という訳だ。

スピーディなヘヴィ・チューンから
バブルガム・ポップと呼ばれる甘いポップ・ソングまで、
彼らの曲は一見取っつきがよく耳馴染みがいい。
でも、気を付けないと
砂糖衣の下には致命的な毒が沈んでいて、
聴き手の耳をしっかりと捕らえてしまう。

彼らは
(といった場合、ここでは明らかにMcDonald Brothersになる訳だが)
実に色々な音楽を聴いている。
それも「お勉強」や
「音楽を語る上での常識」として聴くのではなく、
自分の好奇心の赴くままに貪欲に
彼らは音楽の世界を楽しく動き回っているのだと思う。
この貪欲さがあるからこそ、
ロサンジェルスのシーンで
POISONからGO-GO'SBANGLESまで
ありとあらゆるタイプのバンドと共演し、
様々なバンドの浮沈を目の当たりにして、
それでもしぶとく生き残ってくることが出来たのかもしれない。
(何しろデビューしてからもう25年以上経ってる訳で……)

さて、
色々な音楽を聴いている方は既にご存知かと思うが、
多彩な音楽に影響を受けたバンドのサウンドは
実は色々な楽しみ方が出来る。
表面だけなぞって楽しく踊ることも出来れば、
1つひとつの曲に隠された影響を発見してほくそ笑むことも出来る。

作り手側の音楽的引き出しが多いバンドは、
様々に聴き手を試す。
そして聴き手の引き出しが多ければ多いほど、
聴き手は"自分だけの楽しみ"を見つけ出すことが出来る。

例えば、FAITH NO MOREQUEENTURBONEGRO
今は亡きJELLYFISHなどがそういうバンドだったと思うのだが、
このREDD KROSSもそういうバンドだ。
だから聴く度になんだか新しい発見をした気になる。
本当は最初からちゃんとそこにあって、
私の耳が追いつくのを待っていてくれただけなのだけれど。

だから例え14年前のアルバムであっても
決して古さを感じない。
いつ聴いても彼らの曲は至極自然にそこにある。
だからいつでも安心して、
私はここへ戻って来られる、
という訳なのだ。

REDD KROSSというバンドには
Musician's Musicianという側面もある。
ミュージシャンにファンの多いバンド、
ということだ。

DEF LEPPARDJoe Elliott
WILDHEARTSGinger
SONIC YOUTH
日本の少年ナイフ
そして最近ではDATSUNSまで彼らのことを好きだ、
というミュージシャンは多い。

やりたいことをやり、
クオリティの高い曲を作り続けるその姿勢は
きっとミュージシャンからも共感されやすいのだろう。
音楽に対する姿勢に無理がない、
とでもいえばいいのかしらん。

それにしても彼らの曲を聴いていると、
なんでこうふわっとした気分になるのだろう。
辛いことがあった時、
落ち込んでいる時、
自分の居場所がわからなくなっておろおろしている時、
Jeffの声はいつも私をなだめてくれる。

「ここにいればいいんだよ」

と慰めてくれる。
それは例えばリアル・タイムで見てきたものが同じだから、
ということだけでは説明がつかない想いだ。
懐かしさとも違う、優しさとも違う。
やはりこれは音楽だけが持つ力なのだろう。

REDD KROSSの音楽は
いつも私を13歳の少女に戻してしまう。
好きなバンドのグラビアに胸をときめかせ、
買ってきたばかりのアルバムに
ドキドキしながら針を降ろしていたあの頃の、
音楽がただの音楽ではなく
きらめきと驚きと夢に満ちた
魔法の世界だった頃の自分に。

そしてそれは彼らが同じような想いを経験し、
その時の感動を忘れていないからだと思うのだ。

「最後にライヴやってから7年経つんだよね。
そろそろ動き出そうと思ってさ。
アルバム出して日本に行ってライヴやりたいな」(Jeff)

そうだよね、本当に。
楽しさ満載のあのライヴ、
もう1度見たいもの。

という訳で、私は今、
彼らの新譜を待っている。
どんな音になっているのやら。
変わっていても変わらなくても、
きっと13歳の私が目を覚ます、
そんな音であることは確実なんだろう。(苦笑)

さて、2004年中に新しい音は届くのだろうか?

May you rest in peace...Eddie

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